易きに流されない

2009-03-06 執筆者:小倉 基弘

経済環境が厳しくなってくると、なんとか目先の収益を上げようと商売のやり方が貧相になるときがあります。

せっかく高いビジョン、ポリシーを掲げているのに、今は環境が厳しいからしょうがない、と言い訳をして易(やす)きに流されるのです。

結果はどうなるのでしょうか。

個人のスキルは落ち、仕事に対するモチベーションは下がり、長期的には組織の能力も低下するのです。

米国の自動車産業はその典型かもしれません。

地球温暖化防止、排出ガス削減のため、短期的には収益に貢献しないハイブリット車、燃料電池車の開発努力を継続してきた日本のメーカーと、その努力を怠り、目先の収益の追求のみを行い、易きに流れて今売れる車の販売のみをしてきた米国のメーカーとにはどのような差がついたのでしょうか。

3カ月先、1年先のみを考えて行動するだけではだめです。目前の収益と5年先、10年先を同時に考え、その施策を実行していく力がなければ、私たちの成長は望めないでしょう。

私たちのビジョンは

信頼のおけるハイエンド層向けジョブマーケットを創造し社会の成長に貢献する

ということであり、ミッションのひとつは

優秀なキャンディデイト、卓越したクライアントと長期的な信頼関係を構築する

ということなのです。

それは、数多くの表面的な情報しかない求人案件をキャンディデイトに提供することではありません。

10年後に付き合っていられるかわからない、自分自身だったら入社したいとは思わないような企業を開拓することではないのです。

尊敬できる企業とのリレーションを深め、内部情報をしっかりと把握し、それらをキャンディデイトに提供していくことが私たちの仕事なのです。

職務の万能薬はなく、地道な活動の繰り返しが必要です。

地道にクライアント業界、クライアント企業の知識を調べ上げ、学習し、地道にアポイントをとり、訪問して信頼関係を築き、情報を入手し、レポートとしてまとめ、キャンディデイトに提供していくことが必要です。

優秀なキャンディデイトと定期的に連絡をとり、お互いに有益な情報交換をすることによって信頼関係を深めていくことが重要です。

その努力を継続していくことにより、キャンディデイト以上に業界知識が豊富になり、業界でのネットワークが強固になり、真の意味でキャンディデイトの役にたてるようになるのです。

易きに流されてきたエージェント、目先の収益のみを追い求めていたエージェントがどのような状態になっているのか、よく見なければなりません。

正しい価値観に基づいたハードワーク、忍耐力、持続力、すべてが必要な時期であり、すべてが試される時期です。

易きに流されれば明日は我が身になるのです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。