人材エージェントの職業倫理

2009-04-29 執筆者:小倉 基弘

人材エージェント業界の職業倫理が築かれるためにはどうすれば良いのでしょうか。景気が悪くなった今、少しずつ似非エージェントがリストラ、撤退、破綻等により淘汰、減少していますが、相変わらず以下のような行為も横行しています。

・RESUMEを個人の許可を得ず、無断で企業に送る。

・自社経由で内定を獲得したキャンディデイトに対し、そのポジションでの入社を強引に促す。

・特定されていない人材、企業、部門に対してコールドコールを行う。

・企業の内情、ポジションの詳細もわからないのに案件を勧める。

・業界の内情、知識、ネットワークも持ち合わせていないのに、人の職業選択という重要な意思決定のアドバイスをする。

・プロ意識が感じられない髪型、服装等の身だしなみ。

何故、いつまで経ってもこのような状態が続いているのでしょうか。

根本的にこの業界のビジネス構造上の問題なのか。

能力の低い経営者が多いのか。

そもそも働いている人材の質が低いのか。志が低いのか。プライドを持って仕事をしていないのか。

まずは、当たり前のことを当たり前に行う、ということが必要です。

・個人情報はその個人の許可を得て初めて企業側に開示する。

・個人のキャリアデザインに最適な機会を、できる限り客観的に勧める。

・転職の意思を持ち、また将来のキャリアデザインについてのコンサルティング、情報提供を希望する方にのみサービスを提供する。

・詳細な企業情報、業界情報を取得していき、的確なアドバイスを行う。

・キャンディデイト、クライアントの業界に合った、信用されうる身だしなみを心掛ける。

書いていて、ばからしくなるくらい当たり前のことです。

根本的にはこの業界で働いている人達の志の低さが大きな原因なのでしょう。

「自分の子供にこの仕事を勧められるか?」もしこの質問にYesと答えられないのであれば職務に対する誇りがないのでしょう。自分に嘘をついて仕事をしているのでしょう。早めにこの業界から出ていくべきです。

私たちの仕事は、人の人生において重要な部分を占める職業選択に関わるものです。私たちがキャンディデイトの能力、希望に合った機会提供が的確に出来れば、多くの人が充実した人生を送ることができ、社会全体を向上させていくことが出来るのです。

かく言う私自身もまた、アンテロープの日常をみても、上記が100%出来ているとは言い難く、日々、自分たちの使命を認識し、職務に対するプライドを持って働いていかなければなりません。

この業界にはルール以前に、働く人ひとりひとりの職業倫理の確立が必要です。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。