不況から学ぶこと

2009-07-31 執筆者:小倉 基弘

07年の後半から始まったサブプライム問題に端を発した景気後退が、ようやく底入れをみせてきたようです。もちろんまだ緩やかな回復の兆しがあるのみで本格的な反転ではありませんが、最悪の時期は過ぎたのかもしれません。

02年にこのビジネスを始めた頃は、ちょうど今回と同じようにITバブル後の景気後退局面で、02年03年と当社の初期段階の立ち上がりには多少苦しい経験をしました。

とはいっても、当時は社員が私を含め2、3人しかいませんでしたので、売上が少なければ私と増井さん(現Vorkers代表取締役)の給料をゼロにする、という荒っぽいやり方で乗り切ることができたのです。現在も13人で小所帯ではありますが、創業メンバー以外の社員が増えた今となっては当時のような荒療治は難しく、暴風雨をまともに受けている状態です。

好況期は多くの経営者が時流に乗りながら会社経営を上手くおこなっていけるものですが、あくまでも景気の後押しがあってなせるものであって、今回のような不況期になると個々の経営者の真の実力がはっきりとわかるものです。私も04年以降の景気拡大局面で少しずつですが会社を成長させてきましたが、今回の不況時にはこれまでのやり方ではまったく通用しないことを思い知らされ、自身の無力さを痛感しています。

理想的には好況時のマネジメントと不況時のそれとは同じもので粛々と実行されていくものなのでしょうが、一旦、好況に慣れてしまうと組織もマネジメントもそこで働いている人々も「この状態が普通なのだ」という錯覚に陥り、組織の文化・制度の脆弱さに気が付かないのかもしれません。

能力の高い経営者であれば、歴史から学ぶことが出来ているのかもしれませんが、私のような凡庸な経営者はその時の実体験から学んでいくしかないようです。

ただ人生もそうですが、苦しい時期こそ得ることが多い、というのは事実です。厳しい時期を経験してその時に得たものが順境時の飛躍の土台になるのであって、その逆ではありません。不況時には現行のビジネスモデルの弱い点、組織の不備な点がはっきりとわかってきます。今後、長期間にわたって会社を成長させていくためには、この不況期にあらためて各種ネガティブな点が認識できたことは幸せなことかもしれません。

将来、同じように何度も不況を経験していくことになります。それぞれから何かを学んで、いつの日か不況が来ても泰然としていられるようになりたいと願っています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。