長期的な信頼関係を構築する

2009-10-31 執筆者:小倉 基弘

10月23日付けの日経新聞に、日揮株式会社の重質油開発プロジェクトの記事が掲載されていました。内容は以下の通りです。

『2008年に着工した国営石油会社サウジアラムコの重質油開発プロジェクト。だがリーマン・ショック後の原油価格の急落で(アラムコ側の)前提が狂った。日揮の受注額は約2千億円。資材も値下がりしたので、そのまま進めれば日揮の収益は増える。アラムコ側が「延期」と言えば違約金を取ることもできた。だが、延期を申し出たのは日揮の方だった。「この原油相場では(アラムコにとって)プロジェクトが成り立たない。少し待ちましょう。」契約重視の欧米企業から見れば「お人よし」だが、日揮は短期的な利益よりも長期の信頼関係を優先した。』

日揮の行為は企業としても人としてもビジネスパーソンとしても尊敬されるべきものです。ビジネスであっても人として正しいことをする、ということは大切です。

長期的な信頼関係を構築していくなかで、利益をあげていくことはビジネスの王道だと思います。

人によっては長期的な信頼関係を優先すると、利益があがりにくくなるのではないかと考えるようですが、それは考えが狭いかもしれません。

例えば私たちの職務に置き換えれば、

転職のご相談にいらっしゃった方が、その段階では紹介する案件がなかったり、ご経歴からご希望されている案件が難しいような場合でも、その方がどのように活動していけば希望職種に就けるのかを共に真摯に考え、それが難しい場合は他の方向性を示したり、その方に合った就職活動方法、注意点、RESUMEの効果的な表現等をお教えすることが必要です。

転職活動をお手伝いさせていただいている方が私たちのルート以外で面接プロセスが進んでいる場合に、その会社の内部情報、面接情報、面接者情報を把握していれば、それをその方の面接が上手くいくように提供することもできます。

当社ルートと同時に他ルートで内定を取得されている場合に、出来る限り客観的な立場で意見を述べ、明らかに他ルートの会社が良い場合は積極的にそのキャリアを奨めることも必要です。

それ自体によってその瞬間は私たちには何の売上も上がらないかもしれませんが、その方々が私たちの対応、キャリアコンサルティングに満足していただければ、将来、ご友人の方を紹介してくれるかもしれません。その方が最終的にご入社された会社で人材ニーズが出れば私たちにお声がけいただけるかもしれません。信頼関係がビジネスチャンスを広げ、収益機会を増大するのです。

長期的な信頼関係を地道に続けていけば、パフォーマンスは短期でも長期でもあがるのです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。