創造するマッチング

2012-11-30 執筆者:小倉 基弘

ジョブディスクリプション(職務記述書)の内容に合致するスキル、経験を持ったキャンディデイトを紹介して成約することはこのサービスでは一般的なことであり、比較的容易いことと考えられます。また、同様にキャンディデイトのスキル、経歴のレベルに合ったポジションを紹介して成約することも普通のことでしょう。

当然、私たちの日常業務の中では上記のような事例も日々、発生していていますが、このような成約事例はリクナビのようなWEBでも、一般的なエージェントでも実現することができています。

ただ、プロフェッショナルのエージェントとして私たちがキャンディデイト、クライアントの間に介在している価値は、そういったことにも一部あるかもしれませんが、それ以外の部分のほうが大きいと考えられます。

それではプロフェッショナルエージェントとしてのキャンディデイト、クライアント間への介在価値は何でしょうか。

幾つかあると考えられますが、その一つはマッチングを創造する力だと思っています。

マッチングを創造するとは、そもそも顕在化していないポジションに可能性のあるキャンディデイトを紹介することなのです。

言葉で言うほど簡単な事ではありませんが、私たちエージェントはクライアントの採用意思決定者との信頼関係を構築しておけば先方の企業文化、成長戦略、それに基づいた企業、部門の真のニーズが把握でき、文字面で表されている求人票よりさらに幅を広げて人材を紹介できます。また求人自体がなくても、先方の戦略、マネジメントマターが把握できていればそれに沿った人材を紹介できることもあります。

また、キャンディデイトとの信頼関係が深く、その方の経歴だけではなく、人間性、志向性、個性、ポテンシャル、伸びシロがしっかり把握できれば、当初、キャンディデイトが希望していた案件以外で可能性のあるもの、場合によってはキャンディデイトがまったく想定していないが長期的なキャリア形成上、飛躍の機会になるようなものを提案できるかもしれないのです。

私たちの存在価値はデジタルでマッチングを形成することではなく、キャンディデイト、クライアント双方の内面、内情、ポテンシャルを把握した上で、アナログという表現が良いのかアートという表現が良いのかはわかりませんが、そういったマッチングを創っていくことだと考えています。

このキャリアエージェント業務を単純な作業として現状のままにしておくのか、もしくはクリエイティブなサービスとして付加価値をつけ、エージェント業務そのものをやりがいのあるものに進化させ業界全体を成長させていけるかは、こういったマッチングを創造する能力を私たちエージェント一人ひとりが身につけられるかにかかっています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。