キャリアデザイン

2009-11-20 執筆者:小倉 基弘

 一般的に年金支給年齢の65歳まで働くとした場合、大卒者でおおよそ40年強働き続けることになります。平均寿命の延びている現代ではこの期間が徐々に長くなる傾向はあれ、短くなることはないでしょう。
 社会に出るときに、この長い期間のデザインをしている人はどの位いるのでしょうか。もしくは社会に出て数年後にこのデザインが必要だと感じて実行している人はどの位いるのでしょうか。
 40年間という長期間に渡って自分の強みを活かし、価値観に合った仕事を楽しみ、それにより社会に貢献し、仕事を通して人間的にも成長できたらどんなに充実した人生になることでしょうか。
 一方で40年以上、自分が不得意なこと、好きではないこと、価値観に合わないこと、自分の成長につながらないことをやり続ける苦痛とはいかほどのものなのでしょうか。

 キャリアをデザインするとはどの企業に入社するか、ということではありません。
 社会は変化し続けており、今日の大企業が将来に渡っても、今までのように繁栄を誇っているかなどわかりません。今行っている仕事が数年先に社会から必要とされているかもわからないのです。
 数十年前の米国人の多くが、今日のGM、フォード、クライスラーのような状況を予想していたのでしょうか。同じように80年代の日本人が興銀を中心とする長期信用銀行の消滅、破綻、また都市銀行が今のような合従連衡を行わざるをえない状況になると想像していたのでしょうか。
今日の大企業にも明日の保障はありません。一昔前の日本人の多くが自己実現ではなく安定を求めて入社した大企業はもはや存在しないのかもしれません。
 
 キャリアをデザインするとは、個々人が自分自身の価値観を認識し、強みを理解し、その強みを活かせる機会を探してゆくことなのだと思います。
 その為には当初、自分自身が選んだ機会(組織)の中で出来る限り多くの仕事を引き受けて自分の強みを知ることが重要なのかもしれません。
 自分の強みはなにか。
 自分はどんな価値観を持っているのか。
 何に貢献できるのか。

 自分のキャリアはどの組織に所属するかで考えてゆくべきものではなく、どのような機会を得れば、自分の強みを伸ばしてゆけるのかで考えてゆくことになるのです。組織に依存することなく自らのキャリアをデザインしてゆかなければならなくなってきているのです。
 人生=キャリアではないのかもしれませんが、人生の多くの時間を仕事で費やしているのは事実です。40年間に渡り続いてゆく、長い旅のようなキャリアを充実したものにデザインしてゆくことは私たちにとってはとても大切なことです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。