本当のハンズオン

2010-08-27 執筆者:小倉 基弘

先日、2年前にPEファンドに入社されたAさんと久しぶりに情報交換をさせていただきました。
半年ほど前に投資が実行でき、今はその投資先にほぼ常駐する形で経営に参画されています。
少々疲れ気味のようだったので、「どうしたのですか?」と事情を聞いてみました。

元々その方は投資先をハンズオンで成長させてゆくことを経験したくバイアウトファンドに入社され、今回、初めてそれが実現できたのですが、自分自身が想定していた投資先に乗り込んで経営をしてゆくということと現実のギャップがあまりに大きく現実の経営の難しさに悩んでいるとのことでした。

投資先は典型的な日本の中堅企業で従業員の方々の多くは地元出身で社歴も長く、ご自身が行ってきた仕事に自信を持っています。そこにある日、プライベートエクイティという聞きなれない団体が資本を買い取って、さらに「若造」が役員として送りこまれて来たのです。
ベテランの社員は自分よりも一回りは若いであろう役員の言うことなど聞くわけがありません。しかも就任早々リストラも行わざるをえず、周りはこの若い役員に対して怒りと疑念を持ち始めました。
就任早々、総スカンをくらい、不信の目で見られ、眠れぬ日々が続いているそうです。

投資先に対するハンズオンがすべてこのような状態ではないと思いますが、実際の経営はビジネス書籍にあるような「ビジョンを掲げ、戦略を立て、それを実行してゆく」などという教科書的なことでは上手く行くはずもなく、多くの人の思い、利害関係の渦の中でリーダーシップを発揮し、会社の成長と結び付けてゆくという大変難しい作業を実践してゆかなければならないのでしょう。

今、Aさんは意気消沈されていますが、この修羅場をくぐり抜けて本当のマネジメント力、リーダーシップをつけてゆかれるのだと思います。

*類似した内容の番組がテレビ東京で放映されていました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/rubicon/backnumber/100520.html

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。