国籍不問の競争

2010-12-22 執筆者:小倉 基弘

 今年、2010年、私たちがサポートさせていただき、中途採用マーケットでも難易度が高いとされている外資系投資銀行、外資系戦略コンサルティングファームへ転職された約20%は外国人(中国人、韓国人)の方々でした。
この傾向はここ数年で明確に大きくなってきています。
 私たちから見ても、そのレベルで働いている中国人、韓国人の方々は同レベルの日本人と比べて知識レベル、学習能力については大きく変わらないのではないかと思われますが、語学力、変化への対応力、そしてアグレッシブな気質(積極性、向上心)は圧倒的に上まわっている印象があります。

 目を転じて新卒についても同様に、外資系投資銀行の投資銀行部門、外資系戦略コンサルティングファームでの来年度、2011年度採用予定も外国人(特に中国人、韓国人)の方々が増えており、企業によっては日本人の採用自体が半分以下というところもあるようです。
 さらに進学競争に目を移すと、一例ですが千葉県木更津市にある暁星国際高等学校が2010年度、東大9名、慶応義塾7名、東京理科大14名の合格者を出したそうですが、合格者すべてが中国人留学生で占められているとのことです。

 地殻変動は相当以前から始まっており、大学入試、新卒での就職、転職マーケットに既に明確に現れているように、個々人の競争が日本人同士だけで行われているのではない、というのは明白な事実です。

 1968年に世界第2位の経済大国になったと言われて以来、日本は大きな内需に支えられてビジネスが行われてきていました。しかし、90年以降、日本以外のアジアが大きく変化しているにも関わらず、その大きくても尻つぼみの内需に頼って、変化を拒んできた(もしくは周囲の変化に鈍感であった)附けが、徐々に日常の現象面に現れてきており、日本人が内向き志向になってきている間に国外においてだけでなく日本国内でも国籍不問の競争が現実に起こってきているのです。
 この変化をどのように捉えるかは個々人に委ねられますが、結局は前向きに、有難く受入れるのが最終的に良い結果をもたらすのでしょう。
今のぬるま湯体質の日本人の中に向上心旺盛でハングリー精神逞しい外国人の方々が受験、就職、さらには企業内競争にどんどん参入してくれば、相対的に内向き安定志向の日本人は目を覚ますかもしれません。
現在はアジア圏での話なのかもしれませんが、この流れは止まらず将来は世界レベルでの話になるでしょう。

 今年の大河ドラマは「龍馬伝」。年末に「坂の上の雲」を放映しています。
変化を受入れリスクを果敢に取ったことにより、飛躍的な成長を遂げた多くの若者がいた時代があったのです。
来年以降、キャリアを切り開いていく過程において国籍不問の競争の中で自分を磨いていくことが益々現実のものとなってきます。
このトレンドを前向きに受入れて自分自身を成長させていきたいものです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。