PE(Private Equity)の採用状況

2011-06-29 執筆者:小倉 基弘

 本年も既に半年が過ぎようとしております。2年前、2009年6月はリーマンショック後の景気が最悪期でその月の失業率は過去最悪の5.6%でした。
そこからゆっくりですが景気は回復してきており、現在の失業率は4.7%まで改善してきています。この弱いながらもゆっくりと回復してゆく傾向はしばらく続いてゆくのではないでしょうか。

 弊社がお取引をいただいているPE(Private Equity)業界も09年には状況は最悪で、米国のサン・キャピタル・パートナーズ・ジャパン、ユニタス・キャピタル、ベスター・ジャパン・アドバイザーズが日本を撤退し、日系のエーシーキャピタル、MKSパートナーズが実質解散という状況に追い込まれました。
 翌10年はバイアウトの件数は09年よりも低下しましたが、求人数は徐々にですが増加傾向にありました。本年11年もアドベント・インターナショナルが3月に撤退し、日系大手PEで一部人員削減も行われており厳しい状態は続いています。
 一方で、この半年位には弊社にてお取引をいただいているPEの採用が少しずつですが増加しています。例えば外資系15社中9社、日系28社中11社は採用活動をおこなっており、実際にここ数ヶ月で外資系で4社、日系で2社で採用が実行できています。

 PEのジョブマーケットは分岐点にさしかかっているのかもしれません。
今、PEのフロントで働いている方々とお話をすると総じて先行きの見通しの暗さばかりが話題になりますが、こういった時が次の成長の起点になっている可能性が高いことは景気そのものの循環を見ても感じられます。
 確かに、日本経済の脆弱さ、また日本の企業風土が買収に馴染まない、買収してもプロの経営者層が少なくBSは改善できてもPLを改善する力を持った人材が少ない等、ネガティブな理由は幾らでもあげられるのでしょう。

 一方で、欧米、豪州、中国、インド等に目を向けてみれば欧州系のノルディック・キャピタルによるスイス製薬企業ナイコメッドの武田薬品工業への売却、豪州のバヤード・キャピタルによる電力計大手ランディス・ギアの東芝への売却、米国ベイン・キャピタル、コールバーグ・クラビス・ロバーツによる病院経営チェーンHCAのIPO、同じく米国シルバーレイクのマイクロソフトへのスカイプ・テクノロジーズの売却等、大型成功事例も多く実現しています。
これだけを見てもPEのダイナミックな活動、存在意義が感じられるのではないでしょうか。

 日本のPE界で働かれている方々はおそらく今の日本のビジネスパーソンの中でも飛びぬけて優秀な人材であると思われます。この方々が粘り強く、ファンドの存在意義を問い続け地道に活動してゆけば、PE業界の復活も近い将来に起こるのではないでしょうか。
 業界の発展を側面からサポートさせていただいているものとして、今後のPE業界の復活、さらなる進化を願っています。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。