組織人事コンサルタントは、経営コンサルタントのうち人事領域に特化したコンサルタントです。テレワークの導入など、企業で働き方の変革が進む現代にニーズの高い職種であり、大手総合系コンサルティングファームはもちろん、独立特化系、ブティック系ファームでも募集が強化されています。
ここでは、組織人事コンサルタントの仕事内容や想定される年収をご紹介します。あわせて、求められるスキルや経験、採用選考や面接時のポイントなどについても見ていきましょう。
<目次>
組織人事コンサルタントとは?
組織人事コンサルタント転職市場の最新動向
組織人事コンサルタントの仕事内容
組織人事コンサルタントの年収は?
組織人事コンサルタントに求められるスキル・経験
組織人事コンサルタントの採用選考・おすすめの面接対策
組織人事コンサルタントに向いている人
未経験から組織人事コンサルタントに転職は可能?
転職エージェントに相談するメリット
組織人事コンサルタントへの転職希望者にキャリアコンサルタントからアドバイス
組織人事コンサルタントとは?
組織人事コンサルタントとは、経営コンサルタントの中でも特に組織・人事にまつわる課題解決を専門とするコンサルタントです。明確な呼び方は定まっておらず、企業によっては「組織コンサルタント」「人事コンサルタント」とも呼ばれています。
組織人事コンサルタントは、企業の人事に関する課題を解決する専門家です。一言で「人事に関する課題」といっても、人事制度の構築をはじめ、M&Aに伴う人事制度統合、テレワーク導入後の人事評価制度の再構築、人材育成体系構築、採用戦略の立案、変革を効率よく成功に導くチェンジマネジメントなど、さまざまなものがあります。
これらはすべて組織人事コンサルタントが扱う対象であり、さまざまな経営課題を聞き取り、最適な解決策を立案して実行支援まで行うのが、組織人事コンサルタントの仕事になります。
組織人事コンサルタント転職市場の最新動向
近年のコンサルタント業界の転職市場の活況を受けて、組織人事コンサルタントも求人ニーズは高まっています。ここ数年は働き方改革により働き方の見直しが進み、さらにコロナ禍でリモートワークやデジタル化を進める企業が増加しています。自ずと働き方の変革によって生じる評価制度の改定等をテーマとしたコンサルティング案件が増えており、それに伴って求人数も増加しています。
組織人事コンサルタントを募集しているコンサルティングファームには、大きく分けて下記の3つのタイプがあります。
外資の組織人事系ファーム
マーサー・ジャパン、ウイリス・タワーズワトソン、コーン・フェリー・ジャパンなどは、組織人事領域に特化しているコンサルティングファームの代表例です。企業側の組織人事コンサルティングのニーズの高まりによって、自ずと求人数も増加しています。
大手総合系ファーム
大手総合系と呼ばれるファームであれば、どこでも組織人事のチームを持っています。例えば、デロイト トーマツ コンサルティングやアクセンチュアなどが挙げられます。
FAS、会計事務所系ファーム
最近の傾向として、M&Aや財務に関連した課題解決に特化したFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)や会計事務所系ファームにおいて、組織人事コンサルタントの求人が増加しています。主な理由は、世界的なM&Aの活況により、実際のM&A取引が始まる前の戦略立案フェーズである「Pre M&A」や、M&A実行後の事業統合を行う「Post M&A」において人事領域の課題を扱うケースが増えているからです。特にPMI(組織の統合プロセス)を主力テーマにしているようなFASでは、組織人事に強い人を募集する流れがあります。
組織人事コンサルタントの仕事内容
組織人事コンサルタントは、クライアント企業の人事に関する課題を明らかにし、その解決のための戦略提言・実行支援を行うのが仕事です。
具体的な組織人事コンサルタントの仕事内容は、下記のようなものが挙げられます。
・人事制度や評価制度を構築する人事組織コンサルティング
・M&A前のデューデリジェンス
・M&A後のPMI
・社員のモチベーションアップ、買収した会社に新しい文化を根づかせるためのチェンジマネジメント
・採用コンサルティング
・人材育成・研修コンサルティング
・グローバル人材育成やグローバルな人事評価制度構築といったグローバル人事コンサルティング
組織人事コンサルタントの年収は?
■組織人事コンサルタントの年収例
企業名 |
仕事内容 |
想定年収 |
マーサー・ジャパン |
組織・人事戦略コンサルタント |
600万~1200万円 |
KPMGコンサルティング |
組織人事コンサルタント |
500万~1200万円 |
アクセンチュア |
人材・組織戦略コンサルタント |
500万~2000万円 |
独立系FAS |
人事コンサルタント(PMI) |
500万~800万円 |
組織人事コンサルタントに求められるスキル・経験
採用側にとって理想の応募者は、組織人事のコア領域で3~5年程度の業務経験がある人、または何らかの分野のコンサルタントとして3~5年程度の経験があり、組織や人事に興味がある人です。組織人事のコア領域とは、人事評価制度や報酬制度の設計等を指します。
ただ、この条件を満たす転職希望者はなかなかいないのが現実なので、最近では条件が緩和され、若手で一定の学歴を持ち、事業会社で人事や組織に関わる業務経験があれば、ポテンシャルをみて採用する会社が増えています。その場合、転職者の年齢としては26~28歳ぐらいがボリュームゾーンです。総合人材サービス会社の営業職や、事業会社の人事部等で3~4年の経験を積んだ人が対象になります。
ポテンシャル枠の選考過程では、専門的な知識や経験はほとんど問われません。コンサルティング職に不可欠な論理的思考力や、コミュニケーション能力の質が評価のポイントになります。
なお、日本本社と海外子会社の評価制度・報酬制度を共通化するといったプロジェクトもあるため、英語力はプラス評価につながります。
具体的に、組織人事コンサルタントに求められる経験やスキルはどのようなものなのか、実際の求人情報の例をご紹介しましょう。
マーサー・ジャパン:組織・人事戦略コンサルタントの場合
・コンサルティングファーム(戦略、組織・人事等)、または事業会社での経営企画・人事企画の経験
・論理的思考力
・対人理解力
・コミュニケーション能力
・ラーニングアジリティ
・多様性の理解
・英語力があることが望ましい
KPMGコンサルティング:組織人事コンサルタントの場合
・以下いずれかの経験者。
コンサルティングファームまたはシンクタンクにおいて、組織人事コンサルタントとしての経験を有する者(人材紹介会社、人材派遣会社、教育研修会社は除く)
大手企業または外資系企業の人事部門において、概ね2年以上の人事業務経験を有する者
・人事マネジメントおよび人事諸施策に関する知識・知見
・人事業務プロセスに関する知識・知見
独立系FAS:人事コンサルタント(PMI)の場合
・人事領域に関する業務3年以上(人事制度設計、人事労務DDまたはPMI等)
・クライアント対する提案および折衝経験
組織人事コンサルタントの採用選考・おすすめの面接対策
組織人事コンサルタントの面接の際のポイントは、ほかのコンサルタント職と基本的に変わりません。もっとも大切なことは、論理的思考力や課題意識の強さなど、コンサルタントとしての素養があることを示すことです。場合によっては、課題解決のシミュレーションを行うケースインタビューも行われます。
組織人事のコア領域未経験の場合は、基本的には業務経験より論理的思考力の有無を含めた素養が重視されます。普段から参考書籍を読む、具体的な表現を心掛ける、問題に対して自分の意見をまとめる訓練をするなど、論理的思考力を鍛えておくのがおすすめです。
多少なりとも人事業務の経験がある場合、面接では現職の会社の人事制度・評価制度の課題や問題とそれに対してどう対処したのかを、きちんと自分の言葉で語れることが大切です。自社の人的リソースを最適配分するにはどういう視点が必要だったか、それを踏まえて現状の課題は何なのか、経営者に近い目線で自社の在り方を語れるよう、準備しておきましょう。
組織人事コンサルタントに向いている人
組織人事コンサルタントは、人事評価制度や報酬制度の構築のみならず、人的リソースのマネジメントや組織風土改革、従業員のモチベーションをアップさせるチェンジマネジメントなども手掛けます。
従業員の気持ちに配慮しながら、丁寧に物事を進めていく必要があるため、他者に心配りができる資質を持っている人が向いているといえます。
転職に成功した人の実例
組織人事コンサルタントは、ほかのソリューションに比べて女性コンサルタントが若干多い傾向があります。
女性の転職者の実例として、大手損保の営業職から未経験で総合系ファームの組織人事コンサルタントになったケースがあります。
慶應義塾大学出身で、もともとは戦略コンサルタントへの転職を希望していましたが、転職活動を行う中で人や組織の面白さを感じたことで志望職種を変更。最終的には、外資系戦略ファームの最終試験を受けずに辞退し、総合系ファームの組織人事チームに入られました。
志望職種を変更した理由は、いくらコンサルタントが経営戦略や制度を立案しても、実際に現場の人が動かないと目標の実現には至らないことを実感されたからだったといいます。人の内面に働きかけて人を動かすこと、モチベートしていく人事組織コンサルティングという仕事の魅力に気づかれたということでしょう。
未経験から組織人事コンサルタントに転職は可能?
コンサルティング未経験でも、事業会社の人事部等で評価制度・報酬制度の構築をはじめとする人事領域のコア業務に3~5年程携わっていた人なら、理想的な人材として歓迎されます。
そうした業務に携わった経験はなくても、例えば総合人材サービス会社の営業職や事業会社の採用担当など、人事に関する何らかの業務経験がある場合は、20代後半頃までであれば、ポテンシャル採用をしているファームが少なくありません。
転職エージェントに相談するメリット
組織人事コンサルタントの面接試験では、論理的思考力やコミュニケーション能力といったコンサルタントに必須の素養が備わっているかをチェックされます。また、外資系など一部ファームではケースインタビューも課されるのでしっかり対策しておく必要がありますが、ケースインタビューのシミュレーションや自身の受け答えを客観的に観察して改善点を見つけるといった作業は、1人で行うには限界があります。
転職エージェントを利用すれば、履歴書、職務経歴書の作り方から通常の面接、ケース面接までアドバイスを受けられるので効率的です。さらに、アンテロープキャリアコンサルティングの場合、一人ひとりに専任のコンサルタントがついて、希望する分野やポジション、将来のビジョンなどを共有したうえで、ご希望に合う企業やポジションをご案内します。過去に転職を成功させた方の具体的な活動内容などもご紹介しますので、安心して転職活動を進められます。転職支援サービスのご登録・相談は無料ですので、ぜひご利用ください。
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組織人事コンサルタントへの転職希望者にキャリアコンサルタントからアドバイス
組織人事コンサルタントは、採用ニーズが強い一方、企業が採用に苦慮している領域のひとつです。現在、人事のコア領域に携わっていない人にも採用対象が広がっているので、チャンスは大きいといえるでしょう。
働き方改革とコロナ禍で人々の働き方が大きく変わっていく中で、新しい人事制度や報酬制度の構築を担う組織人事コンサルタントは、ますますニーズが高まると予想されます。まさに今、挑戦するには絶好のタイミングです。
人事分野の業務は幅広く、制度設計というハード面の仕事のほか、チェンジマネジメントのように従業員の気持ちを変えていき、モチベーションを上げる仕組みを作る、ソフト面の仕事もあります。会社、そして従業員とさまざまな関わり方ができる仕事ですので、ぜひ検討してみてください。
監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |
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