ウィズエクスパートナーズ

第1回:信頼と受託者責任を胸に、中小企業の潜在力を解き放つ

ウィズエクスパートナーズ
大岸 崇是 代表取締役パートナー
PROFILE

神戸大学法学部卒業後、住友信託銀行にて金融商品開発、マーケティング、リテール事業企画などに従事。その後、戦略コンサルティングファームのA.T. Kearneyにて、金融機関・総合商社のM&A・新規事業戦略の策定、事業変革支援などに携わる。2007年10月より大手PEファンドに参画し、サービス、小売、商社、建設など幅広い業界への投資を経験。2025年にウィズエクスパートナーズを共同創業し、代表パートナーに就任。多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム修了。

目次
  1. -中堅中小企業をめぐる人の縁を結ぶために創業を決意
  2. -体系化した投資・バリューアップノウハウで企業の潜在力を引き出す
  3. -受託者責任を胸にファンド業界と国内産業の未来をつくる
体系化した投資・バリューアップノウハウで企業の潜在力を引き出す
御社独自のメソッド「With X-I」と「With X-V」とは、どのようなものなのでしょうか。
大岸
IはInvestment、Vはバリューアップの意味で、「With X-I」は投資判断、「With X-V」はバリューアップのノウハウをそれぞれ体系化したものです。私は、創業パートナーの個人技ではなく、チームとして再現性高く成果を出せる組織をつくりたいとの思いを強く持ってウィズエクスパートナーズを創業しましたが、「With X-I」と「With X-V」はその中核的な位置づけです。
With X-Iは、事業の構造的理解を起点に、安定性と成長性のバランスが取れた優良企業を見極め、実現可能性の高いエクイティストーリーをつくり、適正な価格で投資するためのノウハウをまとめたものです。
With X-Vは、投資検討時のエクイティストーリーを経営陣と合意し、A)それを実現するための戦略、B)経営体制とアクションプラン、C)進捗状況を可視化する管理体制を統合的に変革することがバリューアップ成功のカギと定め、Day1からの進め方を記述しています。
投資判断とバリューアップは、PEファンドの投資プロフェッショナルに求められる二大ノウハウですが、一般的には個々の経験を通じて属人的・暗黙知的なノウハウに留まります。創業パートナーがキャリアで得た成功体験と失敗体験に基づくノウハウを言語化し、形式知として整理した、いわば集大成がWith X-IとVです。

暗黙知を言語化することのメリットは非常に大きいと日々実感しています。投資判断の基準を明示することは意思決定の精度と納得感を高めることにつながりますし、バリューアップは投資直後から取り組むべき内容と時間軸がクリアなため、効率的かつ効果的にバリューアップを進められる要因になっています。また、IとVを共通言語として活用することで、若手育成につながる点も非常に大きな利点です。
投資を検討する際には、対象企業のどのような点を重視しますか。
大岸
事業の安定性や成長性を見極めることはもちろんですが、経営者とパートナーとして信頼関係を築けるかどうかも非常に重要です。私たちは投資後、対象企業の現場に深く入り、経営陣と一緒に会社を変えていきます。厳しい局面も含めて数年間にわたり伴走する以上、根底に信頼がなければ、どれほど優れた戦略を描いてもうまくいきません。
信頼していただくために、我々は最初の面談に入る前から対象企業について徹底的に分析し、自分たちなりの仮説を準備します。本音で議論するには、相手の会社を深く理解していなければならないからです。経営者が100ある思いのうち、10しか話せない相手になるのか、100まで話せる相手になれるのか。その違いは、私たちの準備と向き合う姿勢によって生まれると考えています。
入札価格だけではなく、御社のポリシーや姿勢によって選ばれた案件もあるそうですね。
大岸
ある事業承継案件で、創業社長との出会いがありました。当初、価格で譲渡先を決めるとおっしゃっていましたが、最終的には、最高値を提示したわけではない私たちに独占交渉権を与えてくださいました。
理由を尋ねると、当初提案段階から質疑への対応力が非常に高く、さらに、面談を重ねる中で誠実な姿勢が随所にみられ、それらを評価していただいたとのことでした。加えて、工場案内をしてくださった取締役で創業者のご子息が、私たちの行動や従業員への接し方を見て、入札前からウィズエクスパートナーズと一緒に取り組みたいと感じていたのだそうです。会社の将来を考えたときに、私たちへ託すことがもっとも良いと判断していただきました。
PEファンドにとっては数多くある案件の一つでも、創業者にとって会社の譲渡は、一生に一度のたいへん大きな決断です。大切に育ててきた会社が誰の手に渡り、従業員が誰と成長していくのかまで考えて相手を選びます。その重い決断で私たちを選んでくださることは非常に光栄であると同時に、責任の重さも実感します。数年後に「あの判断は正しかった」と思っていただける結果を示すことが、私たちの責任です。
投資後は、どのような支援から始めるのでしょうか。
大岸
With X-Vの説明でも少し触れましたが、投資実行後の最初の目標は、目指す姿について経営陣とアラインメントを構築することです。バリューアップが失敗する最大の理由は、目指す姿や取り組むべき戦略について経営陣が腹落ちしていない状態、すなわちアラインが取れていない状態で経営陣に個別の施策実行を求めることだと考えています。
「これに取り組むべき」とする理由について納得感が得られないまま強引に進めると、「ファンドは分かっていない」、「彼らと話しても無駄だ」という不信感が生まれます。私たちはこれまでの経験で、この不信感こそがバリューアップ成功の最大の敵だと思っています。
アラインメントの構築に向けて、まず始めるのは投資先企業の理解です。経営陣だけでなく、従業員の皆さんが取り組む日頃の業務内容や課題感をしっかり聞いて、実態を理解することが重要です。
投資先企業の実態をしっかり認識した上で、目指す姿について我々の見立てを語り、経営陣の違和感を放置せずに議論を進めていきます。投資検討時に策定したエクイティストーリーはたたき台として、経営陣と納得できる成長戦略をともにまとめていくのが我々のアプローチです。
目指す姿と戦略が固まれば、その施策を誰がリードするかという経営体制が議論できます。近年は投資先へ新たな経営者やCXOポジションのプロフェッショナルを招聘することも増えていますが、このプロセスもアラインメントが重要であり、何を目指すか、そのためにどんな人材が必要かという見立てを共有できていないと、組織がまとまらなくなります。
目指す姿と取り組む戦略を共有し、それを推進できるのは誰かを議論していくと、どのポジションを補強すべきか、どんな経験や成果を挙げてきた人材が必要かも明確になっていきます。目指す姿をクリアに語れることは、候補者を惹き付ける魅力の源泉になり、経営陣と私たちがアラインできていることは候補者の安心材料にもなります。深いアラインメントに基づく相互信頼を確立できると、それがプロフェッショナルを惹き付け、目指す姿を実現できる可能性が高まっていくという好循環になります。
もちろん、事業には良い時も悪い時もあります。計画通りに進まない時こそ、経営陣、従業員、私たちが三位一体となって課題を乗り越えられるかが問われます。苦しい時こそアラインメントが重要であり、平時から信頼関係を築き、厳しい局面では一層密にコミュニケーションを取ることを大切にしています。

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企業プロフィール

ウィズエクスパートナーズ

日本の中堅中小企業を主な投資対象とする独立系プライベートエクイティファンド。事業承継を中心に、大企業の子会社・事業部門のカーブアウト、上場企業の非公開化、ロールアップ投資などに対応する。体系化された投資ノウハウ「With X-I」とバリューアップノウハウ「With X-V」を活用し、従業員、経営陣、株主との相互信頼に基づいて、投資先企業の永続的な価値向上を支援している。

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