日本シェアホルダーサービス株式会社

第1回:市場の変化を捉え、企業と投資家の対話を支える仕事

日本シェアホルダーサービス株式会社
茂渡 裕平 株主戦略アドバイザリー部副部長
PROFILE

大学卒業後、大手証券会社に入社しリテール営業を中心に経験を積む。その後、資産運用会社へ移り、日本株のアクティブファンドマネージャーを15年以上務める。2024年9月、日本シェアホルダーサービスへ入社。現在は株主戦略アドバイザリー部に所属し、実質株主判明調査を起点とするSR・IR支援、議決権行使リスクシミュレーション、アクティビスト対応など、上場企業の戦略的な株主対応を支援している。

目次
  1. -投資家の視点を、企業を良くする力へ
  2. -市場と企業の認識ギャップを可視化し、打ち手に変える
  3. -知的好奇心を力に経営の中枢と向き合う仕事
市場と企業の認識ギャップを可視化し、打ち手に変える
株主戦略アドバイザリー部では、どのようにプロジェクトを進めるのでしょうか。
茂渡
当社のビジネスの根幹にあるのが、実質株主判明調査です。株主名簿上ではカストディアン(投資家に代わり、株式や債券などの有価証券の保管や管理を行う金融機関のこと)などの名義になっているものについて、その背後で実際に株式を保有し、投資判断や議決権行使に関わっている機関投資家を調査する業務です。
一般的なプロジェクトでは、コンサルタントとアナリストが一人ずつチームを組みます。アナリストが実質株主の調査・分析を行い、その結果をもとにコンサルタントがお客様の課題を洗い出し、SR・IR活動や議決権行使への対応策を提案します。新たな論点が生まれれば、再び二人で調査と検討を重ねます。
言葉の響きで誤解されやすいのですが、当社ではアナリストはコンサルタントの下請け的なポジションではなく、データを調査・分析するプロフェッショナルであり、コンサルタントとともに解決策を組み立てるという協業関係にあります。お客様との対話にも基本的に二人で参加します。分析から新たな課題が見つかることもあれば、コンサルタントによる見通しが次の分析に生きることもあります。異なる専門性が相互に作用することで、提案の質が高まると考えています。
特に難易度が高いのは、どのような案件ですか。
茂渡
代表的なものはアクティビスト対応です。お客様の危機感が強く、限られた時間の中で幅広い対応を同時に進めなければならないため、難易度が高い案件になります。
まず確認するのは、企業が投資家に伝えたいことと、投資家が実際に受け取っている認識の間に、どの程度のギャップがあるかです。同時に実質株主判明調査を行い、アクティビストの保有状況や、企業の方針を支持する可能性のある投資家の構成比を把握します。認識ギャップと株主構成の両方が見えなければ、どの対応が必要で、どの程度の効果を見込めるのかを判断できないからです。
その後はSRエンゲージメントを通じ、企業の将来業績の見通し、ガバナンスの改善策、経営陣が打ち出す方針などを投資家へ丁寧に伝えます。投資家の反応を踏まえ、企業側も経営方針や組織体制の改善策を検討します。さらに、次の株主総会を見据えた議決権行使リスクシミュレーションを行い、企業の取り組みがどの程度賛否の変化に結びつくかを予測します。
期待した変化が見られなければ、改めて投資家が課題と感じている点を確認し、対話と改善を繰り返します。数カ月という短期間で、調査、対話、経営上の打ち手、議決権行使の予測までを連動させる仕事です。難しさはありますが、企業経営の一貫性そのものに触れられる、非常にダイナミックな仕事でもあります。
企業と投資家の認識ギャップは、どのように調べるのでしょうか。
茂渡
投資家は、自分たちが何を考え、どのような行動を取ろうとしているのかを表に出したがらないことがあります。私自身もファンドマネージャーを経験しているので、その感覚はよく分かります。
そこで、発行体から「この点を確認したい」という質問をお預かりし、当社が投資家へアンケートを行ったり、直接面談したりします。発行体には率直に伝えにくいこと、発行体からは直接聞きにくいことを第三者として引き出し、両者の認識をつなぐ役割です。投資家の言葉を集めるだけでなく、そこから何が経営上の論点になるのかを整理することが重要です。
アクティビスト対応へのニーズが高まっている背景を、どのように見ていますか。
茂渡
実質株主判明調査の件数やアクティビストによる株主提案は、増加傾向にあると見ています。その背景の一つが、コーポレートガバナンス改革に伴う株式持ち合いの解消です。
持ち合い株式の売却が進むと、これまで安定的に保有されていた株式を、別の投資家が取得することになります。その受け皿には海外の機関投資家も含まれ、アクティビストが保有する機会も生まれます。機関投資家の保有比率が高まれば、彼らが求めるガバナンスのあり方を、議決権行使を通じて実現しようとする動きも強まります。
かつてのように結論が見えやすい株主総会ばかりではなくなりました。想定以上の反対票が投じられれば、経営陣への信任だけでなく、企業のレピュテーションにも影響しかねません。株主総会や株主との対話を、経営陣が自らの課題として捉える必要性が高まっています。
問題が顕在化する前の「予防」も重要なのでしょうか。
茂渡
非常に重要です。アクティビストが株主になった後や、株主総会で反対票が増えた後の対応プログラムもありますが、もっとも大切なのは、そうした状況を招く隙を作らないことです。そのためには、日頃からSR・IR活動を通じて、企業の方針を支持してほしい投資家と密接にコミュニケーションを取る必要があります。
業績や事業戦略を扱うIRでは、ファンドマネージャーなどとの接点を持ちやすい一方、議決権行使やガバナンスを扱うSRでは、企業側から投資家の担当者が見えにくいことがあります。当社は、SR活動に取り組みたい企業と投資家をつなぎ、面談の場を設定します。
ただしさまざまな投資家から異なる要望を受け取ると、企業は何から手をつけるべきか、優先度の設定が困難になることがあります。そこで、面談で交わされた内容を整理し、企業と投資家のギャップを可視化したうえで、優先順位をつけて対応策を提案します。対話の機会をつくるだけでなく、対話を経営上のアクションへ変えるところまで支援するのが、私たちの役割です。
日本シェアホルダーサービスならではの強みは、どこにありますか。
茂渡
当社は三菱UFJ信託銀行の100%子会社です。証券代行業務には、株主名簿の管理や株主総会の運営支援などが含まれ、当社のビジネスと高い親和性があります。三菱UFJ信託銀行が株主名簿管理人を務める企業については、同行と連携し、株主名簿の情報を起点に実質株主判明調査や各種分析へつなげられることが、強固な事業基盤になっています。
もう一つの特徴は、社員のバックグラウンドが非常に多様であることです。当社は新卒採用を行っておらず、三菱UFJ信託銀行からの出向者を除くすべての社員が中途入社です。銀行、証券会社、資産運用会社、事業会社、公務員など、さまざまな経験を持つ人が集まっています。
そもそも実質株主判明調査やSRコンサルティングはニッチな領域で、同じ業界経験者は多くありません。異なる分野で培った知見を持ち寄るからこそ、お客様の課題を多面的に捉え、周辺領域まで踏み込んだ提案ができます。私自身のファンドマネージャー経験も、投資家の考え方を理解し、対策を練り、企業に伝えるうえで役立っています。

この企業で現在募集中のポジション情報

企業プロフィール

日本シェアホルダーサービス株式会社

三菱UFJ信託銀行の100%子会社として、上場企業のSR・IR活動を支援しているプロフェッショナルファーム。実質株主判明調査を起点に、議決権行使対応、コーポレートガバナンス、アクティビスト対応などの調査・コンサルティングを提供。企業と株主・投資家との建設的な対話を支え、企業価値向上に貢献している。

当サイト内の日本シェアホルダーサービス株式会社 企業情報も、ぜひご覧ください。

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