カーライル・グループ

第1回:変革は、個人の心に火が着くところから始まる

カーライル・グループ
ディレクター 渡辺 雄介
PROFILE

慶應義塾大学経済学部を卒業後、三菱商事に入社。10年間の在籍中に機能性食品素材、プラスチックなどへの事業投資、メーカー経営、ターンアラウンドに従事。2004年からハーバード・ビジネス・スクールに留学しMBAを取得、2006年からカーライルに参画。これまでコバレントマテリアル株式会社(現クアーズテック株式会社)、株式会社ツバキ・ナカシマなどへの投資に携わる。現在、シーバイエス株式会社(旧ディバーシー株式会社)および名水美人ファクトリー株式会社(旧九州ジージーシー株式会社)の非常勤取締役。

目次
  1. -コーチとして出身校の野球部を強くしたことが原体験に
  2. -日本人が運営する日本専用のファンドにこだわり
  3. -経験値をフルに生かして、もやしメーカーの事業継承案件に挑む
  4. -会社の成長とともに自らも一つ上のステージへ
コーチとして出身校の野球部を強くしたことが原体験に
1987年に米・ワシントンD.C.で設立されて以来成長を続け、今や1580億ドルを超える運用資産を有する世界最大級の投資ファンドとなった「カーライル・グループ」。その日本拠点は2000年に設立され、一般に身近なところでも「はなの舞」などのブランドを有する居酒屋チェーン「チムニー」や、ベビースターでおなじみの「おやつカンパニー」など、数多くの日本企業への投資を行っています。今回はディレクターとしてディールを牽引している渡辺様にご登場いただき、カーライルにジョインするまでの経緯やファンド業務でしか味わえないやりがいなどについて語っていただきました。エネルギーレベルの高いご本人のお人柄通り、熱のこもったインタビューとなりました。
本日はよろしくお願いいたします。ではまず、渡辺さんがどういった経緯でカーライルに入社されたのかについて、ご説明いただいてもよろしいでしょうか。
渡辺
ずいぶん昔の話からスタートしますが、私は中学高校とずっと野球に打ち込んでいました。坊主頭で上下関係の厳しい根性野球の世界に違和感を覚える一方で、甲子園に行きたい、強いチームを作るにはどうすればいいか、ということを常に考えていました。それで大学ではプレイヤーとして体育会に入ることはせずに、出身高校の野球部のコーチに就任し、監督とコーチ陣の仲間と様々な改革を行いました。例えば、それまでは1年生は基礎トレーニングばかりでボールに触らせなかったのを、逆に夏までは野球だけをさせるようにしたり、硬球を使うシニアリーグのチームに手紙を送って中学生へのリクルーティング活動を行ったり。そういったことを続けるうちに、チームは少しずつ強くなっていき、いつしか関東大会で甲子園常連の強豪校に勝つまでになりました。最初は弱いチームでもその中にきらっと光る素材や志がある時、変革の可能性は大いにあります。変革は必ず、個人の心に火が着くところから始まります。自分がこうやって頑張っていればいつかレギュラーにはなれるかもしれない、でも全員が頑張らないとチームでは勝てない。それが分かると徐々に組織全体にも火が着き始め、ダイナミズムが出来上がってくるとチームとして本当に強くなって勝てるようになる。それをコーチとして実感した、ということが自分の原体験としてあります。

カーライル渡辺雄介氏インタビューカット1
さて、1年間のアメリカ留学なども経験した後に大学を卒業しまして、日本の会社で国際的な仕事がしたいとの思いから三菱商事に入社しました。最初に配属されたのが、三菱商事がスポンサーとなってMBOを実施したアメリカの石油化学会社の事務局です。5人ほどの小さな事務局でしたが先輩方は皆さんビジネススクールの卒業生で、私も入社1日目からLBOとかMBOについて必死に勉強していきました。その後も甘味料会社のターンアラウンドなどの事業投資を中心に、今にして思えばPEに比較的近い仕事に携わっていました。その中で組織変革のダイナミズムや経営のノウハウについて体系的に学びたいと思うようになり、会社を休職してハーバード・ビジネス・スクールに2年間留学しました。

卒業を控えたころ、自分が経営者になるためにどんなスキルセットが必要なのかを冷静に考えるようになりました。元の会社に戻る以外の選択肢もあるのかなと思い悩んでいた矢先に、2号ファンドの立ち上げ期だったカーライル・ジャパンのメンバーが、ハーバードにリクルーティングに来たんです。お恥ずかしい話ですが、私はその当時カーライルを知りませんでした。1年下の学年にいた今の同僚の磯野(泰二氏、ヴァイスプレジデント)に「明日カーライルの面接、受けないんですか」と聞かれて「カーライルって誰?」というくらい(笑)。

面白そうだからと面接を受けることにしたのですが、そこで話をした面接官から「カーライルは企業を資金面でサポートするだけではなく、独立という第二創業に際し、その会社のミッション、ビジョン、何なら社名にまで立ち戻って強化し変革していく」という話を聞いて、まさに目から鱗が落ちる思いを抱いたんです。会社組織というのは、経営者でなくても株主と言う立場から強くしていくことが出来る。自分はスター選手でも監督でもなかったけれど、コーチ役としてチームを強くしたのだという、あの原体験とも重なり、組織との関わりあい方にも色々な形があるのだという気づきがありました。それと同時に、投資ファンドで働けば、これまでの自分の職務経験に足りなかったファイナンス面のスキルも身に着くのではないかという思いもあり、悩んだ結果、カーライルに入社することを決めました。

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企業プロフィール

カーライル・グループ

世界35拠点に1600名以上の投資プロフェッショナルを擁する、世界最大級のオルタナティブ投資会社。日本のオフィスは2000年に開設され、これまでに製造業・金融サービス・消費財小売・ヘルスケアなど業種を問わず多くの企業へ投資を行っている。現在、日本では3号ファンドを運用中で、事業承継や大企業の非中核部門のカーブアウトへのニーズの高まりに積極的に対応している。

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