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取締役/CFO 野崎 順平
PROFILE
2005年に東京大学文学部を卒業後、メリルリンチ日本証券に入社。主に自動車および石油セクターを担当し、M&Aや資金調達に関するアドバイザリー業務を行う。2017年にispaceに転じ、CFOとして資金調達等を手掛ける。
目次
- -夢やロマンでしか語れなかった宇宙がビジネスの対象に
- -資金調達した100億円はミッション2回分の金額
- -「野崎さんちのお父さんは、月の仕事をしているらしい」
資金調達した100億円はミッション2回分の金額
ここ数年で宇宙関連のベンチャー企業が目立つようになりましたが、その市場規模の3分の2は地上向けのビジネスだそうです。御社のように月への輸送事業を見据えている会社というのは、宇宙ベンチャーの中でも稀有な存在のように思いますが、いかがでしょうか。
野崎
有史以来、人類は地上から上空、宇宙へと生活圏を徐々に広げてきました。現在では気象予報もGPSもそうですが、衛星なくして日々の生活は語れなくなってきています。今後はインターネットへの接続も衛星を利用するようになると言われていますが、そうした既存の宇宙ビジネスが、遠くても地球から数万キロという周辺の活動であるのに対し、我々はそれよりも一歩進んで38万キロ離れた月を目指しています。生活圏を月にまで広げようというビジョンを掲げている会社は他になく、その意味ではまだ希少な立ち位置と言えると思います。
そういう部分にも共感されてご入社を決められたと。
野崎
そうですね、壮大な社会実験に関わることが出来るチャンスなのかなとは思っていました。それと、社会人になってからは宇宙のことなどほとんど考えたことはなかったのですが、ある時実家に帰って小学校の卒業文章を開いたら、将来の夢に「宇宙飛行士になりたい」と書いてあって驚きました。そのころ、若田光一さんが日本人初のミッションスペシャリスト(実験など単体のタスクではなく、スペースシャトル自体の運用を行う飛行士)になられたというのが科学雑誌で特集されていて、それがものすごく印象的だったんですね。余談ですが、先日JAXAのカンファレンスで、現在はJAXAの理事を務めてらっしゃる若田さんと初めて直接お話する機会がありました。25年の時を経て夢がつながったというか、人生って不思議だなと思いました。
運命的なものを感じてしまいますね。それでは続いてご入社後、具体的にどんなお仕事をされているかを教えていただけますか。
野崎
私が入社した時はまだ20名弱の小所帯で、会社の基盤となるような財務経理、内部管理の仕組みもほとんどないような状態でしたので、まずはそれらをしっかり構築する、そのための人材を採用するというのが大事な仕事でした。もうひとつ大事だったのが、外部から資金調達するという仕事です。入社後、資金的に大変な時には銀行との折衝などにも奔走していました。
その後、御社はシリーズAとして国内史上最大の103.5億円、宇宙関連のスタートアップとしても世界最大の調達を達成されました。これについて少しご説明いただけますでしょうか。
野崎
既存投資家の方からのアドバイスもいただきまして、100億円を取りにいこうというのは当初からの目標でした。これは理由がない数字ではなく、ロケットの打ち上げ費や研究開発費用も含めて、2回分のミッションを行うための金額です。我々のチャレンジはやはり技術的にもハードルが相応にありますし、地上では再現できないことをしようとしていますので、1回きりのチャレンジではなく、継続ミッションから精度を上げていく環境を整えようという狙いが前提にありました。
当然簡単にはいかないだろうとはメンバー全員が思っていたのですが、その中でも非常に重視していたのが、国内の事業会社の方々になるべく幅広くご参加いただけるようにしよう、ということでした。現在の株主構成を見ていただくと、航空、通信はもちろん、放送、自動車、建設、広告代理店、印刷といったように、非常に多様な業種の会社様にご賛同いただいているのが分かると思います。我々は現在ステップ1で月への輸送インフラの確立を目指していますが、その先には2030年に月の水資源の開発、2040年には1000人が暮らす街を作るという「ムーンバレー構想」を掲げています。これはispace単独で出来ることではないので、開発段階の今から様々なインダストリーの方々と組ませていただき、今後20年のチャレンジをご一緒していただきたいという考えがありました。ちょうどここ数年は、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)設立の機運が非常に高まってきた時期で、事業会社サイドも社外のリソースを利用してイノベーションを起こされたいニーズが膨らんでいたと思います。我々はタイミング良くそこにアクセスすることが出来たのと同時に、多くの経営者の皆様の共感を得ることが出来たのかな、と理解しています。
当然簡単にはいかないだろうとはメンバー全員が思っていたのですが、その中でも非常に重視していたのが、国内の事業会社の方々になるべく幅広くご参加いただけるようにしよう、ということでした。現在の株主構成を見ていただくと、航空、通信はもちろん、放送、自動車、建設、広告代理店、印刷といったように、非常に多様な業種の会社様にご賛同いただいているのが分かると思います。我々は現在ステップ1で月への輸送インフラの確立を目指していますが、その先には2030年に月の水資源の開発、2040年には1000人が暮らす街を作るという「ムーンバレー構想」を掲げています。これはispace単独で出来ることではないので、開発段階の今から様々なインダストリーの方々と組ませていただき、今後20年のチャレンジをご一緒していただきたいという考えがありました。ちょうどここ数年は、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)設立の機運が非常に高まってきた時期で、事業会社サイドも社外のリソースを利用してイノベーションを起こされたいニーズが膨らんでいたと思います。我々はタイミング良くそこにアクセスすることが出来たのと同時に、多くの経営者の皆様の共感を得ることが出来たのかな、と理解しています。
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企業プロフィール
ispace
月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。2018年2月までにシリーズA国内過去最高額となる103.5億円の資金調達を実施した。同年9月、日本初民間開発の月着陸船による「月周回」と「月面着陸」の2つのミッションを行うプログラム「HAKUTO-R」を発表。米SpaceX社のFalcon 9ロケットで2020年と2021年に打ち上げ予定。現在日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動中。
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