一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ

第1回:社会貢献を仕事にする、という新たなキャリアの可能性

一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ
鈴木 栄 代表理事兼CEO
PROFILE

米・カリフォルニア工科大学化学博士号取得。新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、コンサルタントとして経営戦略策定や事業成長支援に携わる。その後、大手IT企業やスタートアップでの就業を経て、再度マッキンゼーに入社し、12年間従事。パートナーとなった後、2013年からKKRキャップストーンに転職し、マネージングディレクターとして、投資先企業の成長と変革を支援。2019年7月よりSIPの代表理事兼CEOに就任。

目次
  1. -社会課題の解決にビジネスの視点を取り入れる
  2. -金銭的リターンをともなうエグジットではなく「卒業」を目指す
  3. -社会貢献=低報酬、という風潮には異議あり
金銭的リターンをともなうエグジットではなく「卒業」を目指す
ありがとうございます。それでは、現在のSIPのメンバー構成や実際の支援のプロセスなどについて教えてください。
鈴木
設立メンバー7名のうち3名が今も理事として残っており、他の方々はアドバイザーや賛助会員という形で、それぞれの本業の傍らSIPに参画いただいています。常勤メンバーは戦略系コンサルティングファームや商社での勤務経験がある若手3名と、金融業界での経験の長い事務局長1名の計4名が在籍しています。
支援のプロセスはPEファンドの業務に似ていて、まずはソーシングから始まります。私達は協働先と呼んでいますが、これまでの人的ネットワークや関連コンテストなどを通じて、我々が関与することで社会的インパクトを拡大できるような候補団体を探します。対象となるのは出来て間もない団体ではなく、ある程度事業基盤が整理されて今後の拡大を目指している第2成長期に入った団体となります。
続くデューデリジェンスには比較的長い時間をかけており、短くても半年、長い場合ですと最初にお会いしてから投資実行まで3年以上かかったケースもあります。その中で次の5つのクライテリアを基に、事業を精査していきます。1つ目は、社会的インパクトの大きさと定量化の可能性。2つ目は事業の健全性。3つ目は社会インパクトの拡張性です。団体自体がインパクトを大きくしたいと考えていて、かつその方法が明らかであることが重要です。4つ目はマネジメントチームの機能性です。我々がその団体の経営陣と一緒にやっていけるかどうか、チームとしてうまく機能出来るかどうかを確認します。最後は事業テーマが我々の目指す3つの領域、すなわち「教育と若者の就労支援」「育児と女性の活躍」「地域コミュニティの発展」と合致しているかを判断します。
協働先への支援は具体的にどう行われるのでしょうか。
鈴木
標準的なケースでは、寄付によって集めた資金から約3000万円を年1000万円ずつ、助成金や株式投資、社債といった形で1~3回にわたり提供します。経営支援については、団体により必要とされる内容が異なりますが、よくあるのはインパクト拡大に向けた事業戦略やマーケティング戦略の策定、ファンドレイジングのサポート、人事システムの構築と評価、スタッフの成長促進などがあります。こうした支援にはプロボノパートナーであるコンサルティングファームの方々にも大きく貢献いただいています。
プロボノパートナーの皆様の関与について、もう少し詳しく教えていただけますか?
SIP鈴木CEOインタビューカット2
鈴木
プロボノパートナーの皆様は、それぞれのプロフェッショナルなスキルや知見をもとに積極的に団体のサポートをしてくださいます。ただ、協働先の方々は経営コンサルタントと話をしたことがない場合がほとんどですので、多少気後れしてしまう場面もあります。そこで私たちは両者がスムーズにコミュニケーションをとれるよう、間に立ってサポートを行います。何を相談すればよいのか、どこまで頼っても良いのか、遠慮しがちな団体とプロボノパートナーの協業が円滑に進むように私たちが調整役として参加するわけです。プロボノパートナーとのプロジェクトは3カ月、6カ月といった期間で行われることが多いのですが、団体のニーズとプロボノパートナーの状況に応じて、最適な支援内容をいっしょに考えるのも私たちの役割です。
PEやVCでは、投資先の企業価値を高めた後に株式売却などを行うエグジットの作業が一つの案件の区切りになりますが、SIPではどうなるのでしょうか。
鈴木
私たちの場合、投資した資金を増やす金銭的リターンを目指しているわけではありませんので、PEにおけるエグジットのコンセプトとは似て非なるものになります。現実には、支援の取り組みが終了し、協働先が自立して社会的インパクトを自主拡大できる体制が整ったと双方が同意できた時点で「卒業」という形になります。出来るだけ多くの団体に支援を届けたいという方針があるため、基本的には3年間という支援期間を設け、その期間内の卒業を目指していくことになります。

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企業プロフィール

一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ

2012年11月に日本初の本格的なベンチャー・フィランソロピー組織として設立。社会課題の解決を目指す「社会性」、革新的な解決策を生み出す「革新性」、持続可能な事業モデルとしての「事業性」を兼ね備えた社会的事業を厳選し、中長期的な資金提供と経営支援を行っている。社会的事業の成功によって社会的インパクトが最大化され、民間の資金や経営支援が循環する社会を実現することをミッションとして掲げている。

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